投資と投機

株式売買における投資と投機の違いって何だろう?
ということで少し考えてみた。

売買目的が違う?

基本的には、投資と投機では、「売買目的」が異なります。

  • 投資は、企業の将来性や方針に対して資金を投入すること。企業のファンダメンタルを重視し売買期間は長期となります。
  • 投機は、株価の予測に対して資金を投入することです。チャートやテクニカルを重視し売買期間は比較的短期になります。


世界で最初の「株式会社」は、オランダの東インド会社といわれています。
貿易を行う船の費用を株主が出資し、うまくいけば大きな配当を受け取っていました。


東証 世界で最初の株式会社
http://www.tse.or.jp/beginner/stock/stk02.html


なお、英語では、投資は「Investment」、投機は「Speculation」(思わく買い、やま)。
投資家は「Investor」、投機家(相場師)は「Speculator」と呼ばれます。


いわゆる「優等生的な株式売買」というのは、投機ではなく投資で、成長性のある自分の好きな会社の株を購入し、配当を受け取って資産を増やしていくという姿勢のようです。


だったら投機ですね

そういう意味では、現在、個人投資家が行っている株式売買というのは、多くは投資でなく「投機」でしょう。「安く買って高く売る」ことが目的ですから。上がるか下がるかの株価の予測にかけているのです。


FP総研 1. 投資の意味
http://www.fpsoken.co.jp/cgi-bin/view/lesson.cgi?PAGE=lesson_basics_0101

「投機は予想の差に賭ける」のです。


もちろん、その予測の元になる要因として、企業のファンダメンタルや将来性、精神などを考慮することはあるでしょうが、株価が下がると思われる会社の株を買って応援する人はマゾでしょう。そういえば、今年、オロナミンC のCMでヨン様効果で、売り上げ好調らしいですが、買っている主婦の中には、「私たちがたくさん、オロナミンCを買うことで、またヨン様をCMに出演させたい」という人もいるらしいです(by はなまるマーケット)。あまり関係ないか。



長期投資の重鎮バフェット氏も自分が管理を行う企業以外では、倫理面は重視しないと言っているようです。


世界投資家列伝
ASIN:4775930109

タバコ会社の株を保有したことはあっても、中毒性のある毒物を売る会社の支配株主になって、その企業の経営をしたいとは思いません。

そして、昨今、売買がより長期より短期(投機的)にシフトしてきているのは、市場が右肩上がりではないからです。


松下律ノ投機ノススメ
http://cafe.nikkobeans.co.jp/lecture/kabu/kabu2.html

長期投資が要警戒なのは、わが国の経済ファンダメンタルズの変化が関係しています。伸び盛りの少年のような経済だった、昭和30年台、40年代であれば、株式の長期投資は有効だったでしょう。今の日本はそういう伸び盛りの経済とは違います。今でも、長期投資することができる株はあるでしょうが多くはない、と見るべきでしょう。

投機はゼロサムゲーム?

近年、手数料の低下、ブロードバンドやPC端末の性能向上による、取引環境のインフラが向上してきました。また、2000年5月の証券取引法の法解釈の変更(明確化?)により同一日での回転売買が可能になりました。これにより今日のデイトレブームが巻き起こったと言われています。


メルマガ「東京アウトローズ」 (m00057117)
http://www.melma.com/mag/17/m00057117/a00000060.html

その新たな法解釈から多くのネット専業証券を利用する個人投資家
は現物株のA銘柄⇒B銘柄⇒C銘柄⇒……と同一約定日において無限連
鎖的に乗り換え売買を行うことができるようになり、今日のデイト
レ狂奔時代を招いたと考えられます。(ただし現物株の同一銘柄の
連続売買は従来通り差金決済になるため出来ません)


デイトレに代表される投機資金は、市場全体にとっては、出来高流動性を高めるという利点があります。通常出来高が高まることで、より株価は適正価格に収束されると言われています(少人数が株価操作を行うことが難しくなる。ただし、逆に、行き過ぎたマネーゲームによる株価の乱高下も問題になっています)。また、株取引の胴元にあたる証券会社にとっては、手数料収入が増えるのが大きなメリットです。


市場全体にとっては、メリットもある投機ですが、投資家同士では「ゼロサムゲーム」だと言われています。誰かが得をすれば誰かが損をしているのです。「ゼロサムゲーム」は悪でしょうか?リスクを理解した上でゲームに参加した参加者同士の争いならば、それが「悪」ということはないと思います。同業企業間のシェアの取り合いもある意味ゼロサムゲームではあります。しかし企業がシェアを取るために、よりよいサービスを提供する努力をするのと異なり、株式投資における努力は、情報収集や予測理論の構築だったりします。倫理的な悪ではないと個人的には思いますが、そこに社会的価値がどれだけあるのかどうか?このあたりについては、また考えてみたいと思います。