電波男

ISBN:4861990025
今更だが、読んだ。
その前に、負け犬の遠吠え(酒井順子)という本を読んだが、酒井女史の本は、負け犬というタイトルなのにもかかわらず、微妙に自己評価高いみたいで、あまり自虐的じゃなくて何かタイトルとは違和感があった。専業主婦への怨念だけは感じられたが。


本田氏の電波男は、こっちこそが負け犬の遠吠えで、リアル女たちに対する怨念がうずまいていた。いろいろと共感できるぞってとこもあり、あと語り口とオタク雑学が面白く、すらっと読めた。電波だけど。


ある種の宗教は競争社会から脱落した負け犬たちの受け皿を提供し、異なる価値観を提供している。それと同じように、この本では、萌えが恋愛資本主義社会から脱落した負け犬たちの受け皿になる、ってな感じのことを言っていたと思う。


本の中で、宮澤賢治都井睦雄(八つ墓村のモデルとなった津山三十人殺しの人)を対比させてる章があった。宮澤賢治は萌えによって救われ、都井はダークサイドに落ちたと言う。都井がもし萌えにハマっていれば、そんな凶行には及ばなかったと。。。最近の話で言うと、秋葉原の通り魔事件の彼が、もし萌えに嵌っていれば、そんな凶行には及ばなかったかもしれない???


しかし、負け犬宗教道徳が、自己欺瞞に満ちている(by ニーチェ)ように、恋愛ゲームで幸せな気分になれるというのも、かなり自分を騙す妄想力が必要だろう。リアル女の子からスキって思われれば、じめじめと暗く腐った憂鬱な人生に光射す、無意味な一日に血が通うかもしれないが、そんな誰かの作ったプログラムにスキって思われてもねぇ。


ルサンチマン(漫画)やマトリックス並に、バーチャルリアリティーが発展すれば、そこまで騙してくれるなら、そんな世界に逃げ込むのも悪くないかもしれないが、そんな時代は100年後、生きているうちには無理だろう。