MSCB

企業が資金調達する方法

企業が資金を調達する方法は、「株式の発行」を伴うかどうかで、大きく分類できます。株式の発行を伴う場合は、増資(自己資本の増加)、伴わない場合は、借金(負債の増加)となります。株式の発行を伴う方法は「エクイティファイナンス」と呼ばれ、具体的には、新株発行、転換社債ワラント債などがあります。これに対して、株式発行を伴わない方法は、デッドファイナンスと呼ばれ、銀行からの借り入れ、普通の社債などがあります。


参考
http://www.nomura.co.jp/terms/a-gyo/equity.html
http://kw.allabout.co.jp/glossary/g_money/w001518.htm
http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=1131866


借金のデメリットは利息が発生することで、また担保がなければ銀行はお金を貸してくれないかもしれません。増資は利息は発生しませんが、一般に一株価値が希薄化します(株価が下がる)。


増資や借金は悪いことではありません。調達した資金以上の収益をもたらすことができれば(ROAを高めることができれば)、それはよい借金と言えます。前向きな資金調達は、一時的に株価を下げる原因になることもありますが、しっかりとして計画があれば株価にとってもプラス要素となります。

CB

企業が行う資金調達方法の一つに社債の発行があります。社債とは、企業が発行する債券で、企業にとっては借金方法の一つの形です。社債の一形態として、CBというものがあります。CBとは転換社債のことで、株式と交換できる社債のことです。CBは株式に転換されるので、前述のエクイティファイナンスの一種でもあります。


参考
CB(Convertible bond)
http://www.nomura.co.jp/terms/c/t-syasai.html

MSCB

MSCBは、特定の条件をつけたCBのことです。例えば、株価が下がったときに交換できる株式数が変更されるようなものです。


参考
MSCB(Moving Strike Convertible Bond)
http://www.nomura.co.jp/terms/m/mscb.html


MSCBの条件には、上方修正、下方修正があります。下方修正は、株価が下がったときに転換される価格も下がる(取得できる株式数が増える)というものです。上方修正は、その逆です。MSCBを引き受ける(企業にお金を貸す)人にとっては、下方修正があった方が有利で、上方修正がない方が有利な条件です。お金を貸す側にとって有利という条件は、逆に企業自身や既存株主にとっては不利な条件となります。


MSCBは、必ずしも既存株主にとって損ではありません。MSCBをもとに調達した資金をもとに前向きな事業を行うことができれば、既存株主にとってもメリットになります。MSCBが「よくない」と言われる場合が多いのは、経営の苦しい企業が、てっとりばやく資金を調達し自転車操業の一時しのぎとして、条件の悪いMSCBを発行してきた経緯があることです。大量の資金を貸したヘッジファンドが、MSCB+空売りをもとに合法的に少ないリスクでサヤ抜きを行います。短期的に企業価値が変わらないのに、ヘッジファンドが得をする分、既存株主が損をするという構図になります。


参考 株主は食い物にされる?MSCBって何?
http://www.asyura.com/2002/hasan9/msg/595.html

ライブドアMSCB

今回のライブドアMSCBは、苦し紛れのMSCBではありません。千才一隅のチャンスにのるための資金調達です。ただし大量の資金を調達するために、ライブドアと既存株主にとっては条件の悪いMSCBを発行してしまいました。短期的な株価はリーマンブラザーズの手のひらの上です。リーマンがライブドア大好き(株価を下げることはあまりしない)という会社でない限り、確実に利益を出すために、空売りMSCB発行を行うことはほぼ確実と言われています。安全な買い時は、リーマンがもう空売りする必要がなくなったときでしょう。

  • 空売りする株がなくなったとき
  • 下方価格に近づいたとき
  • ライブドアの株が今後続伸していくことが確実になったとき


参考
続・買ってはいけないライブドア
http://j_coffee.at.infoseek.co.jp/


ちなみに、ライブドアだけでなく、フジもMSCBを発行しています。なので、MSCBを発行したということだけを見てライブドアの方がフジより株主軽視だと言うにはあたりません。フジがMSCBを発行したのも村上ファンドの買占めに対応する緊急手段ではあったのでしょう。フジとライブドア、どちらのMSCBがいいとえば、フジの方が条件はいい感じですが、どちらも(会社が既存株主にとって)悪い条件であることには違いありません。少しぐらい悪い条件であっても資金を調達する理由があったのです。

          フジ          ライブドア    条件のよさ(補足)
引受会社  大和証券       リーマン      > (無茶しないカモ?)
調達資金  800億円(14%)   800億円(60%)    (%は借入資金/自己資本+借入資金)
当初価格 237,300        450         
上方価格 474,600(200%)  なし          < (%は当初価格比)
下方価格 118,650(50%)   157(34%)      > (%は当初価格比)
価格修正  毎月90%        毎週90%       > (%は割引価格)

ライブドア(2010年満期ユーロ円転換社債型新株予約権付社債発行に関するお知らせ)
http://company.nikkei.co.jp/disclose/redirect_dis.cfr?ano=1208001&t=http://ir.nikkei.co.jp/irftp/data/tdnr1/home/oracle/80/2005/1208001/12080010.pdf


フジ(第1回無担保転換社債型新株予約権付社債の発行に関するお知らせ)
http://www.c-direct.ne.jp/japanese/uj/pdf/10104676/00029547.pdf


まあ、ライブドアの場合、自己資本に比べて借り入れが巨大なため、生命保険に入って勝負に出たというようなリスクのかけ方ですが、その分リターンも大きい期待があるのでしょう。まあ、生命保険とは言っても、失敗しても一株価値が下がるだけで、ライブドアの売り上げや総合価値が下がるわけじゃないですので、ライブドア既存株主以外の人は何の心配もいりませんが。